事業所向けの道具の広告が、この一年で目に見えて増えました。介護と障害福祉をまとめて支援するもの、シフト作成だけに絞ったもの、記録だけのもの。選択肢が増えるのはありがたい一方で、選ぶ側の迷いも深くなっています。
迷いの正体は、たいていひとつの問いに行き着きます。幅広く使える汎用の道具と、自分の事業種別に絞った専用の道具、どちらを取るか。
「専用だからできる」という売り文句
最近見かけた広告に、障害のある方のグループホームの運営者だけに向けた、シフト作成の仕組みがありました。売り文句がはっきりしていました。障害福祉サービス専用だから、ほかの道具ではできなかったことができる。希望を踏まえたシフト、配置の基準の判定、勤務形態の一覧表の出力。現場の声から生まれた、と添えられていました。
一方で、介護の全般を広く支援する道具の広告も同じ時期に見ています。こちらは記録から請求まで、守備範囲の広さが看板です。
汎用の強みと、その裏返し
汎用の道具の強みは、機能の幅と実績の量です。多くの事業所で使われているものは、こなれてもいます。ただし裏返しがあります。守備範囲が広いほど、個々の制度の深いところまでは彫り込まれていないことがある。自分の事業種別に特有の要件や帳票が、かゆいところに手が届かない形で残る場合があります。
専用の道具はその逆です。制度の細部に食い込む一方で、事業の他の部分は別の道具で補うことになり、道具の数が増えます。どちらが正しいという話ではなく、どこで手間が発生するかが違うだけです。
最初に確かめるのは、道具ではなく自分の手順
私がお勧めしたい順番は、道具の比較表を眺める前に、いまの自分たちの手順を紙に書き出すことです。シフトなら、誰が、いつ、何を見ながら、どれだけの時間をかけて作っているか。どこで間違いが起き、どこで残業が生まれているか。
書き出してみると、困りごとの核心が制度の要件にあるのか、単なる転記の手間にあるのかが見えてきます。核心が制度側なら専用が効きます。転記や連絡の手間なら、汎用でも十分なことが多い。道具から考えると宣伝に引っ張られますが、手順から考えると答えは案外はっきりします。
「現場の声から」は、自分の現場と同じとは限らない
もうひとつ、専用をうたう道具にも確認は要ります。現場の声から生まれた、という言葉の現場が、自分の事業所と同じ規模、同じ体制とは限らないからです。夜勤の組み方、兼務の多さ、拠点の数。前提が違えば、専用でも合わないところは残ります。
確かめ方は単純で、自分の事業所のいちばん複雑な一週間を例にして、それがその道具で組めるかを試させてもらうことです。うまくいく週ではなく、いちばん困る週で試す。ここを面倒がらないことが、あとの後悔を減らします。
決め手は、やめるときの身軽さ
最後にひとつ。私は道具を選ぶとき、やめるときのことも見ます。記録や名簿を自分たちの手元に取り出せるか。合わなかったときに、次へ移れるか。入り口の値段より、出口の身軽さのほうが、長い付き合いでは効いてきます。
そして、決めたら小さく始めることです。全部門で一斉に切り替えるのではなく、ひとつの拠点、ひとつの業務から。私の見てきた失敗の多くは、道具の選び間違いではなく、切り替えの大きさの間違いでした。汎用か専用かという問いに、万能の正解はありません。自分の手順を知り、困る週で試し、出口を確かめ、小さく始める。この順番そのものが、答えの代わりになってくれます。
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