支援記録は「話して残す」——音声メモからAIで記録の下書きを作る

夕方、利用者さんを送り出したあと、職員が机に向かって支援記録を書く。どこの事業所でも見かける光景です。ところが、その時間には電話も鳴りますし、翌日の準備もあります。記録は後回しになり、翌朝に思い出しながら書くことになりがちです。

私たちは静岡県東部で、就労継続支援B型の事業所「フェイス・トゥー・フェイス」を運営しています。パソコンを使った事務の作業を中心にした事業所で、職員も日々の記録に追われてきました。この記事では、記録を「書く」前に「話して残す」やり方と、そこでAIに任せる範囲をお伝えします。

目次

書くより先に、話して残す

記録が遅れる理由の多くは、文章を整える手間にあります。何があったかは覚えていても、記録としてふさわしい書き方に直すのに時間がかかるのです。

そこで、まず声で残します。作業が終わった直後や、送迎から戻った車の中ではなく事業所に着いてから、スマートフォンの録音やメモの機能に向かって話します。話す内容は、記録の欄に沿った簡単なもので十分です。

  • 今日の作業の内容と、取り組んだ時間の様子
  • 体調や表情で気になったこと
  • ご本人が口にした言葉で、残しておきたいもの
  • 職員が手伝ったことと、その結果

1人あたり1分ほどです。書くと10分かかる内容も、話すと短く済みます。

AIに頼むのは「整える」ところだけ

話した内容を文字にする機能は、いまのスマートフォンや多くのAIの道具に付いています。文字になったものを、そのまま記録には使いません。話し言葉には「えーと」や言い直しが入りますし、順番もばらばらだからです。

ここでAIの出番です。文字にした内容を貼り付けて、次のように頼みます。

  • 話し言葉を、記録として読める文に整えてください
  • 話していないことは足さないでください
  • ご本人の言葉は、かぎかっこで言ったとおりに残してください
  • 「作業」「体調」「本人の言葉」「支援の内容」の4つに分けてください

この頼み方を紙1枚にまとめて、記録を書く席に置いておくと、職員によって出来上がりがばらつきません。

名前は声に出さない

いちばん気をつけたいのは、個人の情報です。録音の段階から、利用者さんの名前は声に出さず、事業所で決めた記号で呼びます。たとえば「Aさん」「Bさん」のように、記号と本人の対応表は事業所の中だけで持ちます。

病名や服薬の内容のような、とくに配慮の要る情報も、AIに渡す文には入れません。必要なら、記録の仕組みに転記するときに人が書き足します。どの情報までならAIに渡してよいかは、事業所で決まりを作っておくと迷いません。この決まりの作り方は、利用者さんの情報をAIに入れる前の、伏せ方と決まりの記事で詳しく書いています。

下書きは、話した本人が読み直す

AIが整えた文は、あくまで下書きです。話した職員が読み直し、事実と違うところを直してから、記録として残します。

読み直すときに見るのは、次の3つです。

  • 話していない評価や感想が足されていないか
  • 時刻や回数のような数字が、話したとおりになっているか
  • ご本人の言葉が、きれいな言い回しに書き換えられていないか

特に3つめは見落としやすいところです。AIは文章を整えるのが得意なぶん、本人らしい言い方を一般的な言葉に置き換えてしまうことがあります。記録は、あとで支援を見直すときの材料になります。本人の言葉は、言ったとおりに残しておく方が役に立ちます。

続けるための小さな決まり

声で残すやり方は、始めるのは簡単ですが、続けるには決まりが要ります。

まず、録音をいつまで残すかを決めます。下書きを記録に移したら、元の録音は消す、という決まりにしておくと、個人の情報が端末に残り続けません。次に、使う端末を決めます。職員の私物のスマートフォンではなく、事業所の端末を使う方が安心です。

そして、記録を書く時間そのものを、1日の流れの中に置きます。「話して残すのは利用者さんが帰ってから15分の間」のように時間を決めると、後回しになりにくくなります。

うまくいかなかったときの直し方

始めてみると、いくつかつまずきやすいところがあります。よくあるものを3つ挙げます。

1つめは、話す内容が毎回ばらばらになることです。その日に印象に残ったことだけを話してしまい、体調のことが抜ける、といったことが起きます。これは、話す順番を決めたカードを録音する場所に貼っておくと直ります。「作業、体調、本人の言葉、手伝ったこと」の順で話す、と決めておくだけで、抜けが減ります。

2つめは、AIが整えた文が長くなりすぎることです。記録の欄は限られています。頼むときに「各項目は2文以内で」と字数の目安を伝えると、読みやすい長さに収まります。

3つめは、職員によって使う人と使わない人が分かれることです。無理に全員でそろえる必要はありません。書く方が早い人は書けばよいのです。大切なのは、記録が遅れずに残ることです。声で残すやり方は、記録が後回しになりがちな人のための選択肢として置いておきます。

空いた時間で、見返す

話して残すやり方に慣れると、記録にかかる時間は短くなります。その時間を、記録を見返すことに使ってください。1週間分の記録を並べて読むと、体調の波や、作業への向き合い方の変化が見えてきます。記録は書いて終わりではなく、次の支援を考えるための材料です。

手書きの日報や、紙で受け取った書類を表にしたい場合は、私たちが公開している伝票や手書きの紙を表にする試しのページも参考になります。中身はすべて架空のデータで、AIが紙を読み取って表に直す流れを、その場で確かめられます。

まずは明日、1人分だけ声で残してみてください。書く手間と、話す手間の違いが、すぐに分かるはずです。

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この記事を書いた人

(株)トレジャーハンティング、アイ・シー・エス通商(株)、(株)ヒミコ代表取締役。15年以上、自社のネット集客を手掛けてきた実績をもとに、ネット集客コンサルティングを行ってきた。現在、GoHighLevelを使ったGoogleマップレビュー代行を中心に活動している。

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