利用者さんへの声かけや、ご家族への説明は、経験を積むほどうまくなると言われます。ただ、経験を積む前の職員には、練習の場がほとんどありません。いきなり本番で試すことになります。
私たちの事業所は、静岡県東部で就労継続支援B型を運営し、送迎も行っています。この記事では、AIを練習相手にして、声かけや説明の場面練習をする方法をお伝えします。
本番の前に、安全な場所で試したい
現場での声かけは、一度言ったことを取り消せません。言い方を間違えて、相手を傷つけたり、不安にさせたりすることもあります。
AIとの練習なら、間違えても誰も傷つきません。言い直しも、何度でもできます。新しい職員が、自信をつけるための足場として使えます。
練習する場面を選ぶ
最初から難しい場面を選ぶ必要はありません。次のような、日常の場面から始めます。
- 朝、元気がなさそうな利用者さんに声をかける
- 作業のやり方が分からず、手が止まっている人に声をかける
- 送迎の車で、乗るのをためらっている人に声をかける
- ご家族に、その日の様子を電話で伝える
練習する場面は、職員が実際に困った場面から選ぶと、役に立ちます。
AIへの頼み方
練習相手になってもらうときは、役割を決めて頼みます。
- あなたは、就労継続支援B型に通う利用者さんの役をやってください
- 私は職員の役です。朝の声かけの練習をします
- 返事は短くしてください。1回ごとに、私の返事を待ってください
- 終わったら、私の声かけで良かった点と、言い換えるとよい点を教えてください
「1回ごとに待ってください」が大切です。そうしないと、AIが1人で会話を進めてしまい、練習になりません。
AIの返事を、本物の利用者さんと思わない
ここで、大切な注意があります。AIが演じる利用者さんは、現実の利用者さんではありません。実際の人は、AIよりずっと多様で、予想外の反応をします。
練習で身につけたいのは、「正解の言い回し」ではなく、「相手の様子を見て、言い方を変える習慣」です。練習のあとは、いつも先輩と一緒に、現実の場面ではどうなるかを話し合います。
実在の人の情報は入れない
練習の場面を作るとき、実際の利用者さんの名前や、特徴の細かい描写を入れません。「30代の男性で、朝は口数が少ない」といった、特定できない設定にします。
実際にあった場面を材料にしたいときは、名前や日付を伏せ、場面の流れだけを残します。伏せ方の考え方は、情報を入れる前の伏せ方の記事にまとめています。
練習のあとに、先輩が見る
AIとの練習の記録は、画面を先輩と一緒に見ます。AIが挙げた「良かった点」「言い換えるとよい点」を、先輩が見て、事業所の考え方に合っているかを確かめます。
AIの助言は、一般的なものになりがちです。その事業所の方針や、利用者さん一人ひとりへの接し方とは、ずれることもあります。ずれていたら、先輩が補います。
続けるための工夫
練習は、毎週15分、決まった時間に行うと続きます。1回で1場面だけにします。やった場面と、気づいたことを、短く記録します。
記録は、あとで振り返ると、職員の成長が見えます。新しい職員にとっては、自分が少しずつできるようになっていることが、目に見える励みになります。
練習の難しさを、少しずつ上げる
慣れてきたら、場面の難しさを、少しずつ上げます。最初は「少し元気のない人」だったところを、「少しいらだっている人」に変えます。AIには、「少し強い口調で返事をしてください」と頼みます。
大切なのは、難しい場面でも、相手の気持ちを受け止めて、落ち着いて返す練習をすることです。強い口調の相手に、慌てず、短く、穏やかに返す。その感覚を、安全な場所で何度か体験しておくと、本番での余裕につながります。
練習で出てきた言い回しを、共有する
練習でうまくいった言い回しは、メモに残して、職員どうしで共有します。「朝の声かけには、こう言うと反応がよかった」といった小さな工夫が、事業所の財産になります。共有の場は、週の終わりの5分で十分です。ただし、言い回しは、人によって合う合わないがあります。誰かの言い回しを、全員に押しつけないことも、大切な心得です。
うまくいかない日があってもよい
練習をしても、現場で思うように言えない日はあります。それは自然なことです。うまくいかなかった場面を、そのままAIとの練習の題材にして、別の言い方を試すと、次への準備になります。
ご家族への説明の練習にも使える
ご家族への電話や面談での説明も、同じやり方で練習できます。ご家族の役をAIに頼み、「質問が多い方」「心配が強い方」など、設定を変えて試します。説明を短く、はっきりさせる練習になります。送迎が遅れたときの連絡文を前もって作る方法は、遅れたときの連絡文の記事で紹介しています。
まずは、今週の研修の15分で、朝の声かけを1場面だけ、AIと試してみてください。終わったあとに、先輩と感想を話し合う。そこまでをひと組にすると、練習が現場で生きます。
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