福祉の事業所では、見学の問い合わせが夕方以降に入ることが多く、翌日の送迎や記録の合間に返事が遅れがちです。相談員さんや保護者の方にとって、返事の遅さは不安につながります。ここでは、問い合わせてくださった方への最初の一言を、AI電話で返す形を整理します。
返すのは「受け付けました」の一言まで
AIが担うのは、問い合わせを受け取ったことの連絡と、見学の希望日の聞き取りの入り口です。目的は、翌朝までに「届いています」と伝えることにあります。
利用者さんの状況、受け入れの可否、支援の内容には、AIは触れません。ここは職員が、顔の見える形で話す部分です。
任せる範囲と、人が持つ範囲
AIに任せるのは、次の確認です。
- 名乗りとAIであることの開示
- 問い合わせの種類(見学・体験・相談のどれか)
- 都合のよい曜日と時間帯の聞き取り
- 職員から改めて連絡してよいかの同意
人が持つのは、受け入れの判断、利用料や制度の説明、ご本人やご家族の事情に触れる話の全部です。通話の中で相手が事情を話し始めたら、AIは遮らず聞き、「担当の者が改めてお聞きします」と受けて終えます。
台本の骨子
- 名乗り「○○事業所の電話受付のAIです。見学のお問い合わせをいただいた件で、1分ほどお電話してよろしいですか」
- 確認「見学のご希望の曜日や時間帯を、おおよそ教えていただけますか」
- 同意「職員から改めて、日程のご連絡を差し上げます。この番号でよろしいですか」
- 締め「ありがとうございました。失礼いたします」
利用者さんの氏名や障害の状況を、AIに聞かせない設計にしてください。聞かなければ、記録にも残りません。
止める条件
- 相手が家族か相談員か分からなくなったとき
- 声が聞き取りにくい、または急いでいる様子のとき
- 「人と話したい」という希望があったとき
- 断りの言葉が出たとき(最優先で停止して記録)
福祉の相談は、心が動いている状態でかかってくることがあります。AIが対応を続けて相手を疲れさせるより、早めに人へ回すほうが信頼につながります。
記録の残し方と、個人の情報の扱い
記録に残すのは、問い合わせの種類、希望の曜日、連絡してよいかの同意、AIが止めた理由の4つです。お名前は、問い合わせのときにいただいた分だけで足ります。通話の中で出てきた状況の話は、記録に書き写さず、「職員が改めてお聞きする」とだけ残します。
録音を残す場合は、通話の最初に録音していることを伝え、保管する期間と、見られる人を決めておきます。事業所の中で話し合って、迷ったら残さない側に倒すのが安全です。
福祉の事業所あてに、試しにかけて起きたこと
私たちは自社の検証環境で、福祉事業所へ案内の電話をかけるAIを、架空の事業所12件を相手に組んで試しました(2026年10月4日の朝・電話番号を持たないWeb通話・相手役は機械の声)。見たのは、送り先を教えてもらえた、担当の方が不在、断られた、の3つの出口です。
4回かけた結果、送り先の回は番号を1桁ずつ復唱してから締め、締めのあとに質問を足しませんでした。不在の回は、戻られる時間だけを聞いて復唱し、そこで切りました。不合格は断りの1回目だけで、引いたあとに「ご不明な点があれば、いつでもお知らせください」と一言足し、決めていたお詫びの言葉も飛ばしました。断りの文を一字一句の形で台本に固定し、足す語を禁じて4回目にかけ直すと、決めた文だけで終わりました。
断られたあとの一言は、ていねいなつもりでも、相手にはもう一度の売り込みに聞こえます。見学の問い合わせへの折り返しでも、締めの文は一字一句で決めておくのが安全です。
試し方
最初は職員同士で、相談員役・保護者役を決めて、試しの通話を数本録ります。話すスピードと間に加えて、断る役を1本は入れ、締めのあとに言葉が増えないかを職員の耳で確かめます。
運用は、夜間に入った問い合わせの分だけから始めるのが安全です。翌朝、記録を職員が見て、AIが「分からない」で止めた箇所を台本に反映します。電話の記録を次の手につなぐ見方は、電話の記録を、AIの文字起こしから次の手につなぐ見方にまとめています。
AI電話を、自分の会社の業務に合わせて試したい方へ
電話の受付や折り返しをAIに任せる前に、何を任せて何を人が持つかを決める。問い合わせの受け口から記録まで、小さな営業導線を自分の手で作る実務講座を開いています。オンラインで30分の無料個別相談から始められます。
運営: 株式会社トレジャーハンティング