親や親戚から土地や家を相続した人が、不動産会社に最初に聞くことは、たいてい同じです。「これ、どうすればいいですか」。売るのか、貸すのか、持ち続けるのか。その前に、そもそも何を調べ、誰に聞けばよいのかが分からない人がほとんどです。
そこで、最初の案内に入れておきたい項目を5つに絞りました。この記事では、その5つと、AIに任せられる部分、人が確かめる部分の分け方をお伝えします。
最初の案内で、答えを出そうとしない
最初の1通で、売るべきか貸すべきかまで決めてもらう必要はありません。目的は、読んだ人が「何も分からない」から「次に何をするかは分かる」に変わることです。
そのため、案内の中身は、結論ではなく地図に近い形にします。いまの状況を知る、選べる道を知る、相談先を知る。この3つが読めれば、返信しやすくなります。
入れておきたい5項目
- 1つ目:相続した不動産の名義変更(相続登記)が、2024年4月から申請の義務になったこと。相続で取得したと知った日から3年以内という期限があり、正当な理由なく怠ると過料の定めがあります。
- 2つ目:売る・貸す・持ち続けるの3つの道があり、それぞれ最初に調べることが違うこと。
- 3つ目:相続人が複数いる場合は、全員の考えをそろえる段取りが要ること。
- 4つ目:登記は司法書士、税金は税理士、争いごとは弁護士と、相談先が分かれること。不動産会社が答えるのは、市場の見立てと売り方・貸し方の部分であること。
- 5つ目:最初に集めておくとよい書類の一覧。固定資産税の納税通知書、登記事項証明書、鍵や境界の資料など。
5つ目は、実務ではいちばん喜ばれます。「何を用意すればよいか」が分かれば、電話をかける前にできることが生まれるからです。
制度の話は、日付と名前を入れて短く書く
相続の案内でやってはいけないのは、制度を分かりやすく説明しようとして、断定してしまうことです。たとえば「相続した土地は国が引き取ってくれます」と書くと誤りになります。
相続した土地を国に引き取ってもらう制度(相続土地国庫帰属制度)は、2023年4月に始まりましたが、使える土地の条件や、負担する費用の定めがあります。案内では「こういう制度が始まっている。使えるかどうかは条件がある」とだけ書き、詳しい確認は専門家か窓口に向けます。
AIに下書きさせる範囲
AIは、案内文の下書きに向いています。お客様の事情(相続人の人数、物件の場所、空き家かどうか)を一覧にして入れると、5項目を並べ替えて、その人向けの1通を作ってくれます。
さらに、書類の一覧を物件の種類別に作り分けることもできます。土地だけなら、境界と地目の確認を。建物があれば、築年数と増改築の有無を。種類に合わせて項目を変えるのは、AIが得意な仕事です。
人が確かめる範囲
次の3つは、人が見る欄にしておきます。
- 制度の名称、日付、期限の書き方が、いまの内容と合っているか
- 税金や登記の個別の判断に踏み込んでいないか
- 「売ったほうがよい」など、お客様の決断を押す言い方になっていないか
法律や税の記述は、改正で変わります。案内の雛形に書いた日付と制度名は、年に一度、見直す日を決めておくとよいでしょう。
返信が来たあとの、最初の質問を決めておく
案内を読んだ人から返信が来たら、次に聞くことも決めておきます。聞くのは3つだけです。物件の場所、相続人が何人いるか、いま誰かが住んでいるか。この3つが分かれば、次の案内の種類が決まります。
この聞き取りの型は、相続した人からの最初の電話の記事でまとめました。
送る前の、小さな確認
案内は、書き上げたあとに、3つだけ確認します。1つ目は、宛先の相手が、本当にその物件の持ち主かどうかです。名簿の古い情報のまま送ると、別の方に届くことがあります。2つ目は、案内の中に、売却を急がせる言い方が入っていないかです。相続したばかりの方は、気持ちの整理がついていないことが多く、急がせる文面は、読まれる前に閉じられます。3つ目は、問い合わせ先の電話番号と受付の時間が、いまの運用と合っているかです。
この3つは、AIの下書きの段階では確かめきれません。送る担当者が、1通ずつ目で見ます。時間は、1通あたり数分です。数分の確認で、取り違えと、気持ちを損ねる文面を避けられます。送ったあとの反応は、返信の数と、問い合わせの内容で記録しておくと、次の案内の改善に使えます。
私たちの試作の立ち位置
私たちは、お客様の状況を入れると5項目の案内が出る下書きの型を、試作の段階で整えています。ただし、実際の相続案件でお客様に出したことはありません。この記事の内容は、案内の設計の考え方であり、結果の数字ではありません。
実際に使うときは、地元の司法書士や税理士に、案内の文言を1度見てもらう段取りから始めるのが安全です。
次に読む
相続した人の電話の聞き取りから、所有者の名簿の持ち方、売主の流れの見える化まで、続けて読みたい方は最初の10本の地図から選んでください。
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