ご家族への連絡帳は、事業所とご家庭をつなぐ大切な道具です。一方で、毎日書く職員にとっては、記録を書いたあとにもう一度文章を考える、二度手間になりがちな仕事でもあります。
私たちが静岡県東部で運営している就労継続支援B型の事業所「フェイス・トゥー・フェイス」でも、連絡帳を書く時間が夕方に集中していました。この記事では、AIに下書きを作ってもらい、人が一言足して仕上げる続け方をお伝えします。
連絡帳が負担になる理由を分けて考える
連絡帳が重くなる理由は、大きく3つに分かれます。
- 何を書くか迷う(作業の内容、体調、気づいたこと)
- 書き出しと結びの言葉が毎日同じになり、飽きてしまう
- 記録をもう一度、別の言葉に書き直している
AIが手伝えるのは、2つめと3つめです。1つめの「何を書くか」は、事業所の決まりで先に決めておきます。たとえば「作業の内容」「体調と食事」「できたこと」「ご家庭にお願いしたいこと」の4項目にそろえると、迷う時間が減ります。
事実を箇条書きで渡す
AIに渡すのは、その日の事実を短く書いた箇条書きです。文章に整えていなくてかまいません。
- 午前はパソコンで入力の作業。集中して取り組めた
- 昼食は全部食べた
- 午後、少し眠そうだった。休憩を長めに取った
- 帰りの送迎は予定どおり
利用者さんのお名前は「Aさん」のような記号にして、AIに渡します。名前は、下書きができたあとに職員が入れます。この伏せ方の考え方は、利用者さんの情報をAIに入れる前の記事にまとめています。
頼み方の型
AIへの頼み方は、毎日同じ文を使います。
- 下の事実だけを使って、ご家族への連絡帳の下書きを作ってください
- 書いていないことは足さないでください
- 4〜6文で、やさしい言葉でお願いします
- 事実にない評価やほめ言葉は入れないでください
2つめと4つめが大事です。AIは、文章を自然にするために、書いていないことを足してしまうことがあります。「昼食を全部食べた」とだけ渡したのに、「おいしそうに食べていました」と書かれる、といった具合です。ご家庭に伝わる文章は、事実だけでできていなければなりません。
人が一言足す
下書きができたら、職員が読んで、一言足します。足すのは、その場にいた人にしか書けないことです。
- 今日その方が口にした言葉
- 作業で、前回と比べて変わった点
- 職員が感じたこと(「感じたこと」だと分かる書き方で)
この一言が入ると、連絡帳は定型文から、その方の1日の報告に変わります。AIの下書きは、骨組みを作る役です。血が通うのは、人が足した部分です。
書かないことを先に決めておく
連絡帳には、AIに任せるかどうか以前に、書かないことがあります。
- 他の利用者さんの様子や名前
- 体調の変化についての医学的な判断
- 事業所の中でまだ共有していない出来事
体調が普段と違った日は、下書きの文章をそのまま使わず、管理者や看護の資格を持つ職員が内容を確認します。AIは、体調の良し悪しを判断する役ではありません。
続けるために、型を紙1枚にする
下書きの頼み方、書く項目、書かないことを、紙1枚にまとめて置いておきます。担当の職員が替わっても、同じ質で続けられます。
はじめは、1週間だけ試します。書く時間が短くなったか、ご家族から連絡帳の感想が届いたかを確かめて、続けるか決めます。全部の利用者さんで始めず、2〜3人から始めると、直す点が見つかりやすくなります。
連絡帳のもとになる記録そのものを音声で残す方法は、音声メモから記録の下書きを作る記事で紹介しています。この10本の全体の地図は、AIに任せる仕事と任せない仕事の記事にあります。
保護者の声を聞いて、型を直す
連絡帳の型は、一度決めたら終わりではありません。ご家族が読んで分かりやすいか、知りたいことが書かれているかは、読む側に聞かないと分かりません。
年に1度、連絡帳についてご家族に一言聞く機会を作ります。「もっと知りたい項目はありますか」「長すぎませんか」。この2つを聞くだけでも、型の直し方が見えてきます。ご家族の声を聞いたら、その内容をAIへの頼み方に反映します。たとえば「食事の様子を、もう少し詳しく」と言われたなら、事実の箇条書きに食事の項目を足します。
忙しい日の逃げ道を決めておく
どうしても時間がない日もあります。そのときのために、「今日は項目を2つだけ書く」といった、簡易版の型を用意しておきます。毎日同じ量を書こうとすると、続かなくなります。続けることを優先して、書ける日は多く、忙しい日は少なく書く。その幅を、型の中に最初から入れておくのです。
1週間の試しで見ること
試しの1週間が終わったら、職員に3つ聞きます。書く時間は短くなったか、事実と違う文が下書きに入っていなかったか、一言足す作業は負担でなかったか。この3つの答えで、続けるか、頼み方を直すか、やめるかを決めます。うまくいかなかった点は、頼み方の紙に書き足して、次の週に試します。小さく試して直す流れを作っておくと、AIの使い方も事業所のものになっていきます。
まずは、昨日の連絡帳の内容を事実だけの箇条書きにして、AIに下書きを頼んでみてください。
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