土地や建物の所有者の情報を、自社の名簿にまとめておきたい。そう考える不動産会社は少なくありません。売りたい人と買いたい人を結ぶ仕事で、所有者の情報は力の源になるからです。
ただ、名簿は、項目を増やしすぎると負担になり、個人情報の管理も重くなります。この記事では、名簿に入れる項目と入れない項目を決める順番をお伝えします。
最初に決めるのは、項目ではなく、何に使うか
名簿づくりでよくある失敗は、「とりあえず取れる情報を全部入れておく」ことです。個人情報を扱う場合、利用目的をできるだけ特定し、本人に通知または公表する決まりがあります。目的が決まっていなければ、どの項目が要るかも決まりません。
利用目的は、短い文で書けます。たとえば「物件の売却・賃貸のご相談に対応し、関連するご案内をお送りするため」のように、実際にやることだけを書きます。
入れる項目は、目的から逆算する
売却や賃貸の相談に対応するという目的なら、次の項目で足ります。
- お名前と、連絡先(住所、電話、メール)
- 所有している物件の所在と、種別(土地、建物、マンション)
- 物件の状況(居住中、空き家、賃貸中)
- いつごろ動きたいか、その気持ちの度合い
- 連絡を受けてよい手段と、時間帯
- 最後に連絡した日と、その内容
最後の2つは、名簿の価値を決めます。いつ、誰が、何を話したかの記録がなければ、名簿は住所録にすぎません。
入れない項目を、先に紙に書く
次の項目は、入れない方向で決めておきます。
- 家族構成の詳しい事情や、病気・健康の話
- 資産の総額や、預貯金などの金融資産の話
- 争いごとの経緯
- 政治・信条など、仕事に関係のない情報
取れる場合でも、取らない項目を決めておくと、担当者が「念のため」で書き込むのを防げます。個人情報の中には、特に配慮が必要な情報があります。不要なものは持たないのが、いちばん安全です。
出どころの欄を作る
所有者の情報は、登記事項証明書、お客様からの相談、訪問の記録、紹介など、出どころがさまざまです。名簿に「出どころ」の欄を1つ設けておくと、あとで確認や削除を求められたときに、どこから来た情報かをたどれます。
登記事項証明書は、手続きを踏めば取得できますが、取得した情報を営業にそのまま使うかどうかは、会社の方針と専門家の確認で決める領域です。ここは、この記事では判断しません。
項目は少なく始めて、足していく
名簿は、最初から完成形を目指さないほうが続きます。上の6項目に出どころを足した7項目で始め、実際の運用で足りない項目が出たら、1つずつ足します。足すたびに、利用目的に合っているかを確かめます。
AIは、整える仕事を受け持つ
AIに任せられるのは、次のような仕事です。
- 記録の文章から、項目に当てはまる部分を取り出して、名簿に入れる形に整える
- 住所や名前の書き方のゆれをそろえる(名寄せの記事で試した内容を書きました)
- 古くなった記録を見つけて、確認の一覧に出す
入れるかどうか、使ってよいかどうかの判断は、人が持ちます。
項目を増やしすぎない
名簿の項目は、増やし始めると止まりません。あれも持っておきたい、これも念のため、と考えるうちに、入力する人が疲れて、空欄だらけの名簿になります。目安は、15項目前後です。それ以上増やすときは、その項目を使って次に何をするのかを、1行で書き出します。書き出せない項目は、入れません。
逆に、減らす判断も大切です。半年たっても、1度も使われなかった項目は、名簿から外す候補です。外す前に、使われなかった理由を考えます。入力が面倒だったのか、使い方が分からなかったのか。理由によって、項目の形を変えれば、使われるようになることもあります。項目の見直しは、四半期に1回、30分の会議で足ります。
名簿に入れた情報の、更新日を残す
名簿の情報は、時間がたつと古くなります。住所が変わり、連絡先が変わり、相続で持ち主が変わります。そのため、各項目に、最後に確かめた日を残しておく運用を勧めます。日付があれば、1年以上確かめていない情報を、AIに一覧にさせて、確認の優先順位を付けられます。日付のない名簿は、どの情報が新しいのか分からず、結局すべてを疑うことになります。更新日の項目は、入力の手間が増えるように見えますが、確認の時間を大きく減らします。
私たちの試作の立ち位置
私たちは、顧客の項目を15本ほどそろえた検証用の管理画面を持っています。ただ、所有者の名簿として、実際の個人情報を入れて運用した経験はありません。この記事は、名簿の設計の考え方であり、個人情報保護法の解釈を示すものではありません。実際に始めるときは、専門家に、利用目的と項目の一覧を確認してもらってください。
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