福祉の事業所の収入は、制度で決まる部分が大きい仕事です。同じ支援をしていても、届け出ているかどうか、要件を満たしていると示せるかどうかで、入ってくるものが変わる。現場の頑張りと事務の知識が、別々に評価される構造だと言ってもよいと思います。
そのことを突いてくる広告を、最近よく見かけるようになりました。
「近くの事業所は取っている」という広告
先日見かけたのは、障害福祉の事業所に向けて、加算の総点検を勧める広告でした。文句が印象的でした。近くの事業所が算定していて、あなたの事業所が算定していないものがある。その差はどこから来るのか。知っているか、知らないか。それだけで経営の安定は変わる、という組み立てです。
つづけて、算定の要件は年々複雑になっており、最新の情報を追いきれずに機会を逃している事業所が少なくない、と畳みかけていました。
広告の文句は割り引く。ただし構図は本当
広告ですから、不安を突く書き方は割り引いて読むべきです。私も、こうした案内をそのまま信じて急いで申し込むことは勧めません。
ただ、構図そのものには思い当たる節があるのではないでしょうか。要件や様式は変わり続ける。日々の支援に追われて、変更を追う時間が取れない。気づいたときには、届け出れば得られたはずのものを、ずっと逃していた。これは架空の話ではなく、事務の担い手が足りない事業所ほど起こりやすい、ごく現実的な取りこぼしです。
「気づいた人が拾う」体制は、拾えない
問題は、多くの事業所でこの情報収集が誰の仕事でもないことです。管理者が気づいたら見る。研修で耳にしたら考える。気づいた人が拾う建て付けは、実際には誰も拾いません。全員が現場を優先するからです。
私が勧めたいのは、当番をひとり決めることです。専門家である必要はありません。月にいちど、決まった日に、決まった場所を見る係。行政からの通知の綴り、自治体のお知らせのページ、加入している団体からの案内。見る先を三つほどに決めて、変わったことがあれば一枚のメモにして会議に出す。それだけの役です。
当番が見る三か所の決め方
情報の当番がうまく機能しない理由の多くは、見るべき範囲があいまいになっている点にあります。何から何まで網羅しようとすると、日々の業務に追われて続かなくなります。書類の置き場所を決めて、探す時間を減らすのと同様に、情報が集まる窓口をあらかじめ絞り込んでおくことが大切です。
うちの事業種別に関わる通知はこの三か所を見れば届く、と割り切って決めてしまえば、月にいちどの三十分で無理なく回すことができます。たとえば、管轄する自治体の公式ホームページにある障害福祉サービスのページ、国や自治体から届く文書の綴り、そして加入している業界団体の案内などがその候補になります。届いた書類を1か所にまとめる考え方は、職員の研修の記録を1か所にまとめる話と同じです。
一枚のメモの書き方の例
当番が集めてきた情報は、長文のレポートにする必要はありません。会議や共有の場でパッと見て要点が分かる一枚のメモにまとめるのがコツです。
メモの構成例としては、上部に「確認した日付」、中央に「新しく出た通知や変更の要点(箇条書きで数行)」、下部に「事業所として確認や対応が必要かどうかの判断スペース」を設ける程度で十分です。汎用の道具か、専用の道具か——事業所のソフト選びで最初に確かめることを検討する際にも通じますが、複雑なフォーマットよりも、誰もが迷わずに目を通せるシンプルな形を維持することが継続の秘訣となります。
取っている・取っていない・分からないの棚卸し表
制度の改定が近づく時期や定期的な見直しの際には、自分たちの現状を正確に把握しておくことが何よりも重要です。頭の中だけで考えていると、どの加算を算定していて、どれを見逃しているのかが分からなくなってしまいます。
そこで、手元に簡単な棚卸し表を用意することをお勧めします。表の項目はシンプルに、「加算の名称」「現在取っている・取っていない・分からない」「備考や確認事項」の三つだけです。この一覧表をベースにして現状をひと通り書き出す作業を行っておきます。取っていないものや、要件が曖昧で分からないものに印をつけておくだけで、次に何を調べるべきかが明確になります。この一枚があるだけで、外の助けを借りるにしても、話がまるで早くなります。
広告や営業の案内の読み方
改定の年は、案内や広告の数が目に見えて増えます。それ自体は自然なことですが、外部からの情報に焦らされて判断を急ぐ必要はありません。
慌てて何かを契約する前に、先ほどの棚卸し表や情報当番のメモと突き合わせて読み解くことが大切です。自分たちの現状を書き出したものが手元にあれば、営業の文句に無駄に煽られることも、逆に自分たちに必要な提案を門前払いしてしまうことも減っていきます。
改定の年は、案内が増える
制度の改定が近づく時期は、この種の広告や営業が目に見えて増えます。それ自体は自然なことですが、判断を急がされる理由にはなりません。
慌てて何かを契約する前に、まず自分たちの現状をひと通り書き出す。取っているもの、取っていないもの、分からないもの。この一枚があるだけで、外の助けを借りるにしても、話がまるで早くなります。
私自身、経営の立場でいくつもの制度と付き合ってきて思うのは、情報の差は能力の差ではなく、段取りの差だということです。追う先を決め、当番を決め、月にいちどの習慣にする。それだけのことを、先にやった事業所から順に、取りこぼしが減っていきます。広告に不安を突かれてから動くのではなく、不安を突かれても動じない台帳を、静かな月のうちに作っておく。それがいちばん安上がりな備えだと思います。
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