利用者さんと作業を振り返る時間を作る——記録より先に、言葉を聞く

就労支援の事業所では、毎日の作業の様子を職員が記録します。何をどれだけ作ったか、どんな様子だったか。記録は支援を続けるうえで大切なものです。

ただ、記録を書いているのは職員です。利用者さんがその作業をどう感じていたのか、何が楽しくて、何がつらかったのかは、職員の記録からは見えないことがあります。私の事業所でも、記録だけを見て「順調です」と思っていた方が、実はある作業をとても負担に感じていたと、あとになってわかったことがありました。

この記事では、利用者さんと一緒に作業を振り返る時間を作るための段取りをお伝えします。

目次

振り返りは、書く記録とは別のもの

作業の振り返りというと、日報を書くことを思い浮かべるかもしれません。ここでお話しするのは、書く記録ではなく、話す振り返りです。

職員と利用者さんが少しだけ向き合って、「今日の作業はどうでしたか」と聞く。利用者さん自身の言葉で、作業のことを話してもらう。その短い時間が、支援の手がかりになります。

1. 振り返りの時間を決めておく

振り返りは、時間を決めておかないと後回しになります。作業が終わったあとの数分や、帰りの準備の前など、毎日の流れの中に入れておきます。

全員と毎日話すのが難しければ、曜日ごとに話す利用者さんを決める方法もあります。1週間で全員と1度ずつ話せれば十分です。

2. 聞くことを3つに絞る

振り返りで聞くことは、3つくらいに絞っておきます。

1つめは、今日の作業でよかったこと。うまくできたこと、楽しかったことです。2つめは、困ったことやしんどかったこと。3つめは、次にやってみたいことです。

質問が多いと、利用者さんが疲れてしまいます。答えやすい質問から始めて、話したくないときは無理に聞かないようにします。

3. 話しやすい形を選ぶ

話すことが得意な方もいれば、言葉にするのが難しい方もいます。話し方は、利用者さんに合わせて選びます。

顔の表情の絵を指さしてもらう、よかった作業のカードを選んでもらう、短い言葉を書いてもらう。答え方をいくつか用意しておくと、話すのが苦手な方も振り返りに参加しやすくなります。

4. 聞いた言葉を、短く残す

振り返りで聞いた言葉は、職員が短く書き留めます。長い文章にする必要はありません。「袋詰めが楽しかった」「立ち仕事で足が疲れた」といった、利用者さんの言葉をそのまま残すようにしています。

書き留めた言葉を、相談できるAIに渡して整理してもらうこともあります。1か月分の言葉を並べて、よく出てくる言葉や変化を見つけてもらうと、職員だけでは気づきにくい傾向が見えてきます。そのときは、名前を伏せ、誰の言葉かわからない形にしてから渡します。

5. 振り返りを、作業の割り振りに活かす

振り返りで聞いた言葉は、次の作業の割り振りに活かします。負担に感じている作業があれば、時間を短くしたり、ほかの作業と組み合わせたりします。やってみたいという作業があれば、試してみる機会を作ります。

振り返りで話したことが、実際の作業に反映されると、利用者さんも「話してよかった」と感じてくれます。次の振り返りでも、自分の気持ちを話しやすくなります。

職員どうしで振り返りの言葉を共有する

振り返りで聞いた言葉は、話を聞いた職員だけが知っているのではもったいないものです。週に1度の打ち合わせなどで、職員どうしで共有する時間を取ります。

「最近、あの作業が楽しいと言っていました」「立ち仕事がつらいと話していました」。こうした言葉を共有すると、ほかの職員も作業の場面で気を配れるようになります。担当の職員が休みの日でも、利用者さんへの関わり方がそろいます。

共有するときは、利用者さんの言葉を職員の解釈で言い換えすぎないように気をつけています。聞いたままの言葉を伝えることで、その方の気持ちがゆがまずに届きます。

振り返りは、評価の場にしない

振り返りの時間で気をつけているのは、評価の場にしないことです。「もっと頑張りましょう」「ここができていませんでした」と職員が言ってしまうと、利用者さんは本当の気持ちを話しにくくなります。

振り返りは、利用者さんの言葉を聞く時間です。職員は聞き役に回り、話してくれたことにお礼を伝えるだけで十分です。

振り返りの言葉の扱い

振り返りで聞いた言葉には、利用者さんの気持ちや体調のことが含まれることがあります。書き留めた記録は、見られる職員を限り、ほかの利用者さんの目に触れないように扱います。

支援の計画に関わる内容であれば、事業所の記録の決まりに従って残します。記録の残し方や扱いについては、事業所の方針や、自治体や最新の通知で求められていることを確かめておくと安心です。

ご家族に振り返りの様子を伝える場合は、利用者さんご本人の気持ちを大切にし、伝えてよいかを確かめてからにしています。

まずは1人と3分話してみる

振り返りの時間を事業所全体で始めるのが難しければ、まずは明日、1人の利用者さんと3分だけ話してみてください。「今日の作業はどうでしたか」と聞くだけで構いません。

記録だけでは見えなかった、その方の気持ちや得意なことが見えてくるはずです。利用者さんの言葉から始まる支援は、きっと作業の時間をもっと過ごしやすいものにしてくれます。

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この記事を書いた人

(株)トレジャーハンティング、アイ・シー・エス通商(株)、(株)ヒミコ代表取締役。15年以上、自社のネット集客を手掛けてきた実績をもとに、ネット集客コンサルティングを行ってきた。現在、GoHighLevelを使ったGoogleマップレビュー代行を中心に活動している。

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